労働条件の引き下げ(賃金カット)


社員の労働条件は個別の労働契約、就業規則、労働協約によって定められています。それらで定められている労働条件は社員の生活への影響度が高いため、企業側が一方的に変更することができません。

個別の労働契約の変更については、労働契約法でも当事者の合意により変更することができると定められており、企業と社員の双方が同意することが原則となります。

就業規則は企業が社員の労働条件を公平に設定し、社員に明示するために定められたものになります。企業側が一方的に作成するため、自由に就業規則の不利益変更が行われてしまうと社員の立場は非常に不安定な状態になってしまいます。そこで、就業規則の不利益変更は原則認められておらず、例外的な理由が発生した場合のみ変更が認められます。
<就業規則の不利益変更が認められる例外的な理由>

①労働者の受ける不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の就業規則の変更に係る事情に照らし合理的なものと認められる場合
上記の要件を満たす場合に変更が認められます。

労働協約は、労働組合と企業との間で労働条件等を協定したものになります。労働組合は労働協約の締結にあたり組合員の意見を聴取・集約し企業と交渉する立場にあるため、労働条件の不利益変更に該当するような労働協約の変更であっても締結されれば有効となります。

上記のように労働条件を変更するには様々な条件をクリアする必要があります。 従って、業績悪化に伴い労働条件の引き下げ(賃金カット)を実施する場合は、就業規則を改定し、社員の個別の同意(労働組合がある場合は、労働協約の締結でも可)を得ていることが原則となります。

しかし、企業が就業規則の変更のみによって①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況、⑤その他の就業規則の変更に係る事情に照らし合理的なものと認められる場合のすべてを満たす場合は、不利益変更が可能となります。この場合においても、裁判での判断となる場合は就業規則の変更が無効となる場合があるため、社員の個別の同意を得ておいた方がよいと思われます。